為替のアノマリー
前回の記事、株式投資のアノマリーに続いて、為替(米ドル/円)のアノマリーをまとめてみました。
月日に関するアノマリー
1月の値動きが、その年の値動きを決める
1月の月足が円高なら、その年の年足も円高になる。逆に、1月の月足が円安なら、その年の年足も円安になる。
1月の高値/安値が、その年の高値/安値になる
1月につけた高値(または安値)が、その年の高値(または安値)になる。
2月は円高・ドル安
2月は円高・ドル安になりやすい。
この背景には米国債の償還・利払いがある。米国債の償還期限および利払い日は2月と8月に集中しており、しかも日本の米国債保有残高は世界で一二を争うほど多いため、2月には、償還された大量のドルが円に換えられる。その結果、円高・ドル安になる(特に、利払い日の2月15日前後)。
3月は円高・ドル安
3月は円高・ドル安になりやすい。
日本の企業が年度決算に向けて、保有しているドルを円に換えるのが原因とされる。
4月は円安・ドル高
4月は円安・ドル高になりやすい。
機関投資家が新年度予算を元に海外投資を行う・ゴールデンウィークに海外旅行を予定している日本人が旅行のためにドルを買う、などの理由が考えられる。
ゴールデンウィークは円高・ドル安
4月の円安・ドル高の反動でドルが売られるため、と言われている。
5月は円高・ドル安
5月は円高・ドル安になりやすい。
2月や8月ほどではないが、5月と11月にも米国債の償還期限が集中している。なので、5月には償還された大量のドルが円に換えられる。その結果、円高・ドル安になる。
6月は円高・ドル安
6月は円高・ドル安になりやすい。
6月は第1四半期の決算月に当たる。3月ほどではないが決算期の傾向がみられ、企業は保有しているドルを円に換える。よって、円高・ドル安になる。
7月は円安・ドル高
7月は円安・ドル高になりやすい。
理由は不明。
8月の円高・ドル安
8月は円高・ドル安になりやすい。
上にも書いたが、米国債の償還期限および利払い日は2月と8月に集中しており、しかも日本の米国債保有残高は世界で一二を争うほど多いため、8月には償還された大量のドルが円に換えられる。その結果、円高・ドル安になる(特に、利払い日の8月15日前後)。
なお、「夏休みに海外旅行を予定している日本人が旅行のためにドルを買うので、円安・ドル高になる」という主張もあるが、「8月は円高・ドル安」というアノマリーの方が強く支持されている模様。
9月は円高・ドル安
9月は円高・ドル安になりやすい。
9月は中間決算の月に当たる。3月ほどではないが決算期の傾向がみられ、企業は保有しているドルを円に換える。よって、円高・ドル安になる。
10月は円高・ドル安
10月は円高・ドル安になりやすい。
アメリカでは、10月は株価が下がりやすい月とされる(「10月効果」)。そのため、リスクオフの円買いが起き、円高・ドル安になる。
なお、10月は1年のうち最も円高になりやすい月、と言われている。
11月は円高・ドル安
11月は円高・ドル安になりやすい。
2月や8月ほどではないが、5月と11月にも米国債の償還期限が集中している。なので、11月には償還された大量のドルが円に換えられる。その結果、円高・ドル安になる。
12月は円安・ドル高
12月は円安・ドル高になりやすい。
アメリカの企業が年度決算(アメリカでは12月決算が一般的)に向けて保有している外貨資産をドルに換える・アメリカの投資家が利益確定に動く、などの理由が考えられる。
12月は荒れる
12月は為替相場が荒れやすい。
アメリカにはクリスマス休暇があるため、市場参加者が激減。おまけに、年末に向けて手仕舞いの動きが加速するため、相場は荒れやすくなる。
ゴトー日
5のつく日と10のつく日(5日・10日・15日・20日・25日・30日)は円安・ドル高になりやすい。
日本の輸入企業は、5のつく日と10のつく日に、取引先への支払いを行うことが多い。支払いはドル建てで行うのが一般的なので、ドルから円への両替え(円売り・ドル買い)が大量に発生。その結果、円安・ドル高になる。
特に、日本の午前8時頃から午前9時55分(仲値が決まる時刻)にかけて、円安・ドル高になる。10時を過ぎると、値動きが緩やかになる。
月齢のアノマリー
新月の日(1日前後)に、ドルは高値をつける。満月の日(15日前後)に、ドルは安値をつける。
つまり、新月から満月にかけては円高・ドル安、満月から新月にかけては円安・ドル高が進む。新月の日・満月の日は相場の転換点に当たるので、新月の日はドルが下がりやすく、満月の日はドルが上がりやすい。
曜日に関するアノマリー
水曜日のスワップポイント
水曜日の深夜から木曜日の早朝にかけては、円安・ドル高になりやすい。
FXでは、ポジションを翌営業日まで持ち越すと、スワップポイントが発生する。また、FXの受け渡し日は翌々営業日に設定されている。そして、土日は市場が閉じているため、土日分のスワップポイントは、水曜日から木曜日にポジションを持ち越した場合に付与されることになっている。
営業日は日本時間の午前7時(夏時間の場合は午前6時)に切り替わるので、水曜日の深夜から木曜日の早朝に向けて金利の低い円が売られ、金利の高い通貨が買われる。結果、円安・ドル高になりやすい。
なお、祝日があると、休日分のスワップポイントが付与される曜日が変わるので注意。
時間帯に関するアノマリー
ロンドンフィキシング
日本時間の25時(夏時間の場合は24時)の直前の時間帯は、値動きが激しい。
ロンドンフィキシングとは、イギリスのロンドン外国為替市場で、金の取引価格および銀行の外貨取引の基準レートが決定される時間のこと。日本時間の25時(夏時間の場合は24時)に当たり、この時刻に向けて為替の取引量は増大し、値動きが激しくなる。特に月末最終営業日は、イギリス企業の決済時期と重なるため、値動きがいっそう激しくなる。
なお、円高になる/円安になる、といった一定の傾向はなく、日によってどちらに動くかは異なる。
イベントに関するアノマリー
大統領選挙のアノマリー
アメリカ大統領選挙の年とその翌年は、円安・ドル高になりやすい。中間選挙の年は円高・ドル安になりやすい。
その他のアノマリー
ジブリ効果
金曜ロードショーでスタジオジブリの作品が放送されると、その日の夜あるいは翌週の月曜日は相場が荒れやすい。円高・ドル安になることが多い。
水星の逆行
水星逆行期間は、相場が荒れやすい。
水星逆行とは、水星が公転軌道と逆向きに動いているように見える現象で、年に3、4回起きる。水星逆行の期間中は、値動きが不安定になることが多い。
株式投資のアノマリー
投資理論や経済理論では説明できないものの、投資家が参考にしている経験則を「アノマリー」と呼びます。
アノマリーは合理的な根拠があるわけではないので、無闇に信じるのは危険です。ただし、完全に無視するわけにもいきません。
というのも、アノマリーを参考にして投資を行う勢力が一定数いるからです。「投資家がアノマリーを信じて株式を買う→株価が上がる→アノマリーが現実になる」という現象が起きるわけです。
多くの人が値上がりすると思うから、株価は上がるのです。よって、アノマリーが真実か嘘かは大した問題ではありません。重要なのは「多くの投資家が参考にしているアノマリーは何か?」を知っておくことなのです。
株式投資のアノマリーを以下にまとめてみました。参考にしてください。
月日に関するアノマリー
1月効果
1月は株価が上がりやすい。特に、小型株が上がりやすい。
1月の株価が、その年の株価を決める
1月に株価が上がると、その年の株価は上がりやすい。逆に、1月の株価が下がると、その年の株価は下がりやすい。
戎天井(えびすてんじょう)
今宮戎神社(大阪)で十日戎が開催される1月9日~1月11日頃に、株価は天井を打つ。
節分天井、彼岸底
節分(2月3日)の頃に株価は天井を打つ。そこから株価は下がり、春の彼岸(3月20日前後)の頃に底値をつける。
4月効果
4月は株価が上がりやすい。
こいのぼり天井
5月の第1週(ゴールデンウィークの頃)に株価は天井を打つ。こいのぼりの季節が過ぎると、株価は下がる。
ゴールデンウィークは荒れる
ゴールデンウィークは株価の値動きが激しくなる。
セル・イン・メイ(Sell in May)
5月は株価が下がりやすいので、株式を売った方がよい。
なお、元々はイギリスの格言であり、原文は"Sell in May and go away. Don’t come back until St Leger day."(訳:5月に株式を売って相場から離れろ。そして、セントレジャーデイ(9月の第2土曜日)まで戻ってくるな)。9月に株価が底値をつける傾向があるため、9月に株式を買うことを推奨している。結果、5月から9月にかけて株式相場はもたつきやすいとされる。
サマーラリー
アメリカの株式市場では、7月4日(独立記念日)から9月の第1月曜日(労働者の日)まで、株価が上がりやすい。
上記の"Sell in May and go away. Don’t come back until St Leger day."と真っ向から対立するアノマリーだが、どちらを信じるかはあなた次第。
七夕天井
七夕(7月7日)の頃に株価は天井を打つ。
天神底
大阪天満宮で天神祭が開催される7月25日頃に、株価は底値をつける。
夏枯れ相場
夏になると株式の取引高が減少する。日本では夏休み・お盆休み、海外では夏季休暇の期間と重なるため、市場に参加する投資家が減るのが原因とされる。特に、北半球が夏休みとなる8月で顕著。
9月は株価が下がる
9月は株価が下がりやすい。株価が下がる確率が最も高い月と言われている。下落幅も大きい。
10月効果
10月は株価が下がりやすい。特に、米国株で顕著。
ハロウィン効果
ハロウィン(10月31日)の頃に株価は底値をつけ、以後半年間、株価は上昇する。
このアノマリーに基づき、「10月末に買い、4月(または5月)に売る」という投資戦略が存在する。
感謝祭は株価が上がる
アメリカの株式市場では、感謝祭(11月の第4木曜日)の前後は株価が上がりやすい。
12月は株価が下がる
12月は株価が下がりやすい。利益確定・節税売り・信用取引の手仕舞いが行われるためとされる。
餅つき相場
日本の株式市場では、年末は株式の取引量が少なくなり、株価の値動きが激しくなる。
掉尾の一振(とうびのいっしん)
日本の株式市場では、12月の最後の週は株価が上がりやすい。大納会(年末の最終取引日)に向けて、株価が上がる。
クリスマス・ラリー(サンタクロース・ラリー)
アメリカの株式市場では、クリスマス(12月25日)から1月の第1週まで、株価が上がりやすい。
TOM効果
月の変わり目(Turn of the Month)は株価が上がりやすい。
このアノマリーに基づき、「ある月の最終取引日に買い、翌月の第1週に売る」という投資戦略が存在する。
二日新甫は荒れる(ふつかしんぽはあれる)
2日から取引が始まる月は相場が荒れやすい。
月齢のアノマリー
新月の日(1日前後)に株価は天井を打つ。満月の日(15日前後)に株価は底値をつける。
SQ効果
3月・6月・9月・12月の第2週は株価が上がりやすい。
3の倍数の月の第2金曜日(「メジャーSQ」と呼ばれる)には、先物取引とオプション取引の清算が同時に行われるため、清算日に向けて取引量が増加。結果、株価が上がると言われている。
ただし、水曜日だけは株価が下がりやすい(後述する『魔の水曜日』)。
曜日に関するアノマリー
月曜株安
月曜日は株価が下がりやすい。
魔の水曜日
第2週の水曜日は株価が下がりやすい。
各月の第2金曜日に、オプション取引の清算が行われる(3の倍数の月には先物取引の清算も)のだが、その週の水曜日は株価が下がると言われている。
週末効果
金曜日は株価が上がりやすい。
ジブリ効果
金曜日にスタジオジブリ作品がテレビで放映されると、翌週の月曜日は株価の値動きが激しくなる。株価は下がることが多い。
時間帯に関するアノマリー
オーバーナイト効果
株式市場が開いている日中より、株式市場が閉じている夜間の方が、リターンは高くなる。
干支に関するアノマリー
子(ね)は繁盛、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(う)跳ねる、辰・巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申・酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)笑い、亥(い)固まる
日本の株式市場では――
子年は株価が上がりやすい。
丑年は株価が下がりやすい。
寅年は株価が上がりやすい。
卯年は株価が上がりやすい。
辰年と巳年は、株価が天井を打つことが多い。
午年は株価が下がりやすい。
未年は株価の値動きが少ない。
申年と酉年は株価が荒れる。
戌年は株価が上がりやすい。
亥年は株価の値動きが少ない。
イベントに関するアノマリー
選挙は買い
日本の株式市場では、衆議院選挙の一ヶ月前から投票日まで、株価が上がりやすい。
なお、参議院選挙では、そういった傾向は見受けられない。
解散総選挙は買い
日本の株式市場では、衆議院解散日から投票日まで、株価が上がりやすい。
大統領選挙のアノマリー
アメリカの株式市場では、アメリカ大統領選挙の前年は、株価が上がりやすい。
なお、大統領選挙に関するアノマリーは他にもある(例:大統領サイクル)が、上記のものが最も有名。
読売ジャイアンツのアノマリー
日本の株式市場では、読売ジャイアンツがリーグ優勝すると株価が上がる。日本シリーズでも優勝すれば、株価が上がる確率はさらに増える。
スーパーボウルのアノマリー
アメリカの株式市場では、スーパーボウル(アメリカンフットボールのNFL王者決定戦)で、NFCのチームが勝てば株価が上がり、AFCのチームが勝てば株価が下がる。
オリンピック効果
夏季オリンピックの開催国が決定すると、開催年に向けて、その国の株価は上がる。
なお、冬季オリンピックでは、そういった傾向は見受けられない。
指標に関するアノマリー
小型株効果
小型株(時価総額と流動性が低い銘柄)は大型株より、リターンが高くなりやすい。
低PER効果
PERが低い銘柄は、PERが高い銘柄より、リターンが高くなりやすい。
低PBR効果
PBRが低い銘柄は、PBRが高い銘柄より、リターンが高くなりやすい。
低ボラティリティ効果
ボラティリティ(株価の変動率)が低い銘柄は、ボラティリティが高い銘柄より、リターンが高くなりやすい。
配当利回り効果
配当利回りの高い銘柄は、配当利回りの低い銘柄より、リターンが高くなりやすい。
会計発生高アノマリー
会計発生高の小さい銘柄は、会計発生高の大きい銘柄より、リターンが高くなりやすい。
会計発生高とは、会計上の利益と現金収支の差のことで、以下の式で求められる。現金収入が多いと、会計発生高は小さくなる。
ネグレクテッド・ファーム効果
アナリストの注目度が低い銘柄は、注目度の高い銘柄より、リターンが高くなりやすい。
モメンタム効果
株価が上がっている銘柄はそのまま上がり続ける。株価が下がっている銘柄はそのまま下がり続ける。
中期投資で有効とされる。アメリカの株式市場などで見受けられる現象だが、日本の株式市場では当てはまらないことが多い。
リターン・リバーサル効果
株価が上がっている銘柄はその後下がる。株価が下がっている銘柄はその後上がる。
短期投資・長期投資で有効とされる。日本の株式市場などで見受けられる現象。
企業活動に関するアノマリー
決算発表後の株価ドリフト
決算発表後に、市場の予想を超える好材料を企業が公表すると、公表直後だけでなく、その後しばらく株価が上がり続ける。
逆に、決算発表後に、市場の予想を超える悪材料を企業が公表すると、公表直後だけでなく、その後しばらく株価が下がり続ける。
IPOアノマリー
新規公開株式は、公開直後は株価が上がりやすい。特に、初値は公開価格を超えることが多い。
ただし、長期的に見ると株価は下がりやすい。
配当アノマリー
高配当銘柄は、配当の権利付き最終売買日に向けて、株価が上がる。
優待アノマリー
株主優待銘柄は、優待の権利付き最終売買日に向けて、株価が上がる。
その他のアノマリー
サザエさん効果
日本の株式市場では、アニメ『サザエさん』の視聴率が上がると株価は下がる。逆に、視聴率が下がると株価は上がる。
芸能人アノマリー
日本の株式市場では、有名な芸能人が結婚を発表すると株価は下がる。
太陽黒点説
太陽黒点の数が増えると株価は上がる。逆に、太陽黒点の数が減ると株価は下がる。
水星の逆行
水星逆行期間は、相場が荒れやすい。
水星逆行とは、水星が公転軌道と逆向きに動いているように見える現象で、年に3、4回起きる。水星逆行の期間中は、値動きが不安定になることが多い。株価の暴落もたびたび起きている。
投資をするために必要な知識を分類してみた
投資をするために必要な知識を分類してみました。学習の参考にしてください。
- 「金融市場」に関する知識
- 「金融機関」に関する知識
- 「投資戦略」に関する知識
- 「投資商品」に関する知識
- 「個別銘柄」に関する知識
- 「業界」に関する知識
- 「経済」に関する知識
- 「税金」に関する知識
- 「法律」に関する知識
- 「ライフプラン」に関する知識
- 「必要な知識の身につけ方」に関する知識
「金融市場」に関する知識
投資は金融活動の一種です。そして、金融活動が行われるのは金融市場です。なので、金融市場に関する知識は最低限覚えておきましょう。
【知識の例】
・金融市場とは
・株式市場の取引時間
・東京証券取引所の市場区分
・上場とは
「金融機関」に関する知識
個人投資家は金融機関を介して投資を行うので、金融機関に関する知識は不可欠です。特に、証券会社のことはしっかりと理解する必要があります。
【知識の例】
・証券口座とは
・証券会社の選び方
・各証券会社の特徴(扱っている投資商品の種類など)
・証券口座の開設方法
・各銀行の特徴(扱っている投資商品の種類など)
「投資戦略」に関する知識
証券口座を開設すれば、いつでも投資を始めることができます。とはいえ、個々の投資商品に目を向ける前に、より巨視的な観点から投資戦略を立てておくことも重要でしょう。
【知識の例】
・分散投資とは
・ドルコスト平均法とは
・短期投資と長期投資
・アノマリー投資
「投資商品」に関する知識
投資戦略が決まったら、次にするべきことは投資商品の選定です。投資商品の分類、各投資商品の仕組みや特徴、売買ルール(購入方法、売却の方法、手数料など)などに関する知識が求められます。
また、投資商品同士の関係(株価と債券は逆に動くなど)も抑えておくとよいでしょう。
【知識の例】
・投資商品の分類
・株式とは
・債券とは
・株価と債券価格の関係
「個別銘柄」に関する知識
投資商品を選んだら、いよいよ個別銘柄の選定に移ります。どの銘柄をどのタイミングで買えばよいか判断するためには、個別銘柄の分析が必要になります。
投資戦略によって必要な分析は変わりますが、チャートや板の読み方は、どんな戦略をとるにせよ学んでおくべきです。
【知識の例】
・各銘柄の特徴
・チャートの読み方
・板の読み方
・投資指標の意味
・企業情報(財務諸表や業績予想)の読み方
「業界」に関する知識
業界事情に詳しくなると、個別銘柄を選ぶ段階で大いに役に立ちます。個人投資家が入手できる情報には限界がありますが、できる限り調べておきましょう。
【知識の例】
・業界の分類
・各業界の動向
「経済」に関する知識
経済の動きは、金融市場に様々な影響を及ぼします。経済の基本的な知識、日々のニュースで確認できる経済動向、経済学の専門的な理論など、投資の参考になる情報は無数に存在します。
【知識の例】
・金利とは
・為替とは
・経済指標の意味
・政府や中央銀行の経済政策
「税金」に関する知識
基本的に、投資で得た利益には税金が課せられます。ただし、一定の条件下では、非課税になったり、還付金が返ってきたりと、節税が可能です。税金に関する知識は学んでおいて損はありません。
【知識の例】
・投資で得た利益にかかる税金の種類と税率
・確定申告は必要か否か
・NISA(少額投資非課税制度)とは
「法律」に関する知識
金融商品取引法や金融商品販売法など、投資に関する法律はいくつか存在します。正直、学習の優先順位は低いですが、暇な時に調べてみると、案外面白いかもしれません。
【知識の例】
・金融商品取引法とは
・金融商品販売法とは
「ライフプラン」に関する知識
ライフプランとは、今後の人生で必要になる資金をいかに調達するか、計画を立てることを意味します。そして、投資はライフプランと密接な関わりを持ちます。例えば、ライフプランを立てて置けば、投資の目標金額は自ずと決まりますし、モチベーションも自然と上がるでしょう。逆に、ライフプランがなければ、なんとなく金を増やしているだけ――という感は否めません。
投資に慣れてきたら、ぜひ一度ライフプランを立ててみてください。
【知識の例】
・ライフプランの立て方
「必要な知識の身につけ方」に関する知識
ここまで投資に必要な知識を分類してきましたが、それぞれの知識をどうやって身につければよいか――最適な勉強法/情報の収集方法――を知っておけば、学習の効率が上がります。自分なりの勉強法/情報の収集方法を確立しましょう。
【知識の例】
・投資の勉強に使える参考書
・おすすめの経済雑誌
・投資に役立つWebサイト
・投資に役立つSNSアカウント
重要な株式投資指標まとめ
流動比率
流動比率とは、流動負債に対する流動資産の割合を示す指標。企業の短期的な支払い能力を知ることができる。
流動資産とは、一年以内に現金化できる資産のこと(例:現金、預金、売掛金、受取手形)。
流動負債とは、一年以内に返済しなければならない負債のこと(例:買掛金、支払手形、短期借入金)。
流動比率は高いほど安全性が高い。100%を下回ると、流動資産より流動負債の方が多いことになるので、危険な状態だといえる。
自己資本比率
自己資本比率とは、資産に対する自己資本の割合を示す指標。財務の安全性を判断するために使われる。業種によって数値が大きく異なるので、これぐらいの数字なら適正だと一概には言えないが、自己資本比率が一桁だと債務超過のリスクがあるので危険。
なお、自己資本と純資産は同義ではない。純資産は「株主資本」「その他包括利益累計額」「新株予約権」「少数株主持分(非支配株主持分)」から成り、このうち「株主資本」と「その他包括利益累計額」を足したものを「自己資本」と呼ぶ。
株主資本とは、株主が保有する資産のこと。株主からの出資金やその出資をもとに事業で得た利益など。
その他包括利益累計額とは、為替や株価の変動によって生じた資産の含み益・含み損のこと。
新株予約権とは、あらかじめ決まった金額や条件で株式を取得できる権利のこと。企業から見れば、将来の出資金といえるので、純資産に属する。
少数株主持分(非支配株主持分)とは、連結会計のみに現れる勘定科目で、親会社以外の株主の持分のこと。
新株予約権と少数株主持分は、現株主の持分とはいえないので、自己資本には含まれない。
自己資本利益率(ROE:Return On Equity)
自己資本利益率(ROE)とは、自己資本に対する当期純利益の割合を示す指標。株主が投資した資金を、企業がどれぐらい効率的に使って利益を上げているかを知ることができる。10%を超えると、投資価値のある優良企業だとみなされる。
総資産利益率(ROA:Return on Assets)
総資産利益率(ROA)とは、資産(総資産)に対する当期純利益の割合を示す指標。企業が資産をどれぐらい効率的に使って利益を上げているかを知ることができる。5%を超えると、投資価値のある優良企業だとみなされる。
1株当たり当期純利益(EPS:Earnings Per Share)
1株当たり当期純利益(EPS)とは、企業が1株当たりどれぐらいの利益を生んでいるかを示す指標。企業の収益性を分析するために使われる。値が大きいほど、収益力が高いことを意味する。また、過去の数値と比較すれば、企業の成長度を測ることもできる。
ただし、EPSが上昇したからといって、当期純利益が増えたとは限らないので注意。増資・株式分割・自社株買いなどによって発行済株式総数が減少すれば、EPSは上昇する。
1株当たり純資産(BPS:Book-value Per Share)
1株当たり純資産(BPS)とは、1株当たり純資産がどれぐらいあるかを示す指標。企業の安全性を分析するために使われる。値が高いほど、企業の安全性が高いことを意味する。
BPSは理論上、仮に企業が解散した場合に株主のもとに残る価値を意味するので、「1株当たりの解散価値」とも呼ばれる(ただし、企業が解散しても実際にその金額を受け取れるわけではない。あくまで理論上の話である)。
株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)
株価収益率(PER)とは、1株当たり当期純利益の何倍で株が買われているかを示す指標。企業の収益に対する、株価の割安性を判断するのに使われる。値が低いほど割安、高いほど割高であることを意味する。業種によって値が大きく異なるので、同業種間の比較に用いられる。
なお、PERには過去の実績に基づく「実績PER」と、今後の予想利益に基づく「予想PER」があるが、よく使われるのは「予想PER」の方である。
株価純資産倍率(PBR:Price Book-value Ratio)
株価純資産倍率(PBR)とは、1株当たり純資産の何倍で株が買われているかを示す指標。企業の純資産に対する、株価の割安性を判断するのに使われる。PBRが1より小さいと割安、1より大きいと割高とされる。業種によって値が大きく異なるので、同業種間の比較に用いられる。
なお、PBRには過去の実績に基づく「実績PBR」と、今後の予想利益に基づく「予想PBR」があるが、よく使われるのは「実績PBR」の方である。
配当性向
配当性向とは、1株当たりの当期純利益に対する1株当たりの年間配当金の割合を示す指標。企業が事業で得た利益をどれぐらい株主に還元しているかを知ることができる。配当性向の平均値は30%前後とされるが、配当性向は高ければよいというものではない。例えば、成長企業は事業拡大に資金を回すため、配当性向が低くなる傾向がある。
配当利回り
配当利回りとは、現在の株価に対する年間配当金の割合を示す指標。配当狙いで株式を買う場合は、真っ先に見るべき指標である。例えば、預金や国債の金利と比較して、配当利回りの方が低ければ、配当狙いでその株式を買うのはやめるべきだろう。
なお、配当利回りを算出する式の「1株当たりの年間配当金」は、終了した年度の配当金額ではなく、今期または来期の予想配当なので、減配/無配のリスクがあることは忘れないように。
また、配当利回りが高くても、その原因が株価の低さにある場合は要注意。
物価が上がる/下がると、どうなる?
注:ここに記した法則はあくまでも一般論であり、現実には、法則に当てはまらない現象はいくらでも見受けられる。
債券
【法則】
物価が上がると、債券価格は下がる
物価が下がると、債券価格は上がる
【理由】
物価が上がると、日本銀行はインフレを抑制するために、金利を上昇させる。よって、債券価格は下がる。
株価
【法則】
物価が上がると、株価は上がる
物価が下がると、株価は下がる
【理由】
物価が上がると、利益が増える。よって、株価は上がる。
ただし、これは全ての商品・サービスの価格が均等に上がり、売上と売上原価が同じ割合だけ増加した場合の話であり、現実には、均等に価格が上がることはありえない。そのため、物価が上がったのに株価は下がった、という事例はいくらでも存在する。
例えば、原材料や資源価格の上昇による資源インフレや賃金の高騰による賃金インフレなど、生産コストの上昇によって起こるインフレ(これを「コストプッシュインフレ」という)は、売上に悪影響を与えるので、株価を下げる。また、あまりにも急激なインフレは、投資家に不安を抱かせるので、株価を下げる。
株はインフレに強いと言われるが、あまり過信すぎないように。
金利
【法則】
物価が上がると、金利は上昇する
物価が下がると、金利は下落する
【理由】
物価が上がると、日本銀行はインフレを抑制しようとする。よって、金利は上昇する。
為替
【法則】
物価が上がると、円安になる
物価が下がると、円高になる
【理由】
物価が上がると、円の価値は下がる。よって、円安になる。
金(きん)
【法則】
物価が上がると、金の価格は上がる
物価が下がると、金の価格は下がる
【理由】
金の価格はドルを基準にして決められており、金を日本で売買するときは、その時点での為替レートによって、ドルを日本円に換算してからグラムあたりの値段を割り出す。そのため、円安になると、金の価格は上がる。
そして、物価が上がると、円の価値は下がり、円安になる。よって、金の価格は上がる。
円高/円安になると、どうなる?
注:ここに記した法則はあくまでも一般論であり、現実には、法則に当てはまらない現象はいくらでも見受けられる。
債券
【法則】
円高になると、債券価格は上がる
円安になると、債券価格は下がる
【理由】
円高になると、海外の投資家が日本の債券を買おうとするので、債券の需要が増える。よって、債券価格は上がる。
株価
【法則】
円高になると、輸入型企業の株価は上がり、輸出型企業の株価は下がる
円安になると、輸出型企業の株価は上がり、輸入型企業の株価は下がる
【理由】
円高になると、輸入品の価格が下がる。よって、輸入型企業の株価は上がる。反面、輸出品の価格は上がるため、日本製品の国際競争力が低下する。よって、輸出型企業の株価は下がる。
金利
【法則】
円安になると、金利は上昇する
【理由】
円高になると、日本銀行は円高を抑制するために、円の需要を減らそうとする。よって、金利は下落する。
物価
【法則】
円高になると、物価は下がる
円安になると、物価は上がる
【理由】
円高になると、輸入品の価格が下がる。よって、国内の物価は下がる。
金(きん)
【法則】
円高になると、金の価格は下がる
円安になると、金の価格は上がる
【理由】
国際的な金の取引単位を「トロイオンス(1トロイオンスは約31.1035g)」といい、1トロイオンスあたりの価格は米ドルで表されることになっている。
一方、日本ではグラム単位で金の取引が行われているので、金を日本で売買するときは、その時点での為替レートによって、ドルを日本円に換算してからグラムあたりの値段を割り出す。よって、円高になると、金の価格は下がる。
金利が上昇すると、どうなる?
注:ここに記した法則はあくまでも一般論であり、現実には、法則に当てはまらない現象はいくらでも見受けられる。
債券
【法則】
金利が上昇すると、債券価格は下がる
金利が下落すると、債券価格は上がる
【理由】
金利が上昇すると、古い債券の価値は新しい債券よりも低くなる。よって、債券価格は下がる。
株価
【法則】
金利が上昇すると、株価は下がる
金利が下落すると、株価は上がる
【理由】
金利が上昇すると、投資家は株式よりも定期預金や債券に投資する方が有利だと考える。また、企業にとっては支払利息が増えるため、業績が悪化する一因となる。よって、株価は下がる。
※「債券価格と株価は逆向きに動く」というのが通説だが、例外もいくつか存在する。金利の上昇/下落の局面はその一つで、債券価格と株価は正の相関を示す。
為替
【法則】
円の金利が下落すると、円安になる
【理由】
円の金利が上昇すると、海外資本が日本に流入し、円の需要が高まる。よって、円高になる。
物価
【法則】
金利が上昇すると、物価は下がる
金利が下落すると、物価は上がる
【理由】
金利が上昇すると、個人や企業の資金調達が困難になり、経済活動が抑制される。よって、景気は後退し、物価は下がる。
金(きん)
【法則】
【理由】
数ある金利の中でも、金の価格と最も深い関わりを持つのは、アメリカの実質金利(長期)である。
アメリカの実質金利(長期)が上昇すると、投資家は金よりもアメリカの定期預金や債券に投資する方が有利だと考える。よって、金の価格は下がる。