為替のアノマリー
前回の記事、株式投資のアノマリーに続いて、為替(米ドル/円)のアノマリーをまとめてみました。
月日に関するアノマリー
1月の値動きが、その年の値動きを決める
1月の月足が円高なら、その年の年足も円高になる。逆に、1月の月足が円安なら、その年の年足も円安になる。
1月の高値/安値が、その年の高値/安値になる
1月につけた高値(または安値)が、その年の高値(または安値)になる。
2月は円高・ドル安
2月は円高・ドル安になりやすい。
この背景には米国債の償還・利払いがある。米国債の償還期限および利払い日は2月と8月に集中しており、しかも日本の米国債保有残高は世界で一二を争うほど多いため、2月には、償還された大量のドルが円に換えられる。その結果、円高・ドル安になる(特に、利払い日の2月15日前後)。
3月は円高・ドル安
3月は円高・ドル安になりやすい。
日本の企業が年度決算に向けて、保有しているドルを円に換えるのが原因とされる。
4月は円安・ドル高
4月は円安・ドル高になりやすい。
機関投資家が新年度予算を元に海外投資を行う・ゴールデンウィークに海外旅行を予定している日本人が旅行のためにドルを買う、などの理由が考えられる。
ゴールデンウィークは円高・ドル安
4月の円安・ドル高の反動でドルが売られるため、と言われている。
5月は円高・ドル安
5月は円高・ドル安になりやすい。
2月や8月ほどではないが、5月と11月にも米国債の償還期限が集中している。なので、5月には償還された大量のドルが円に換えられる。その結果、円高・ドル安になる。
6月は円高・ドル安
6月は円高・ドル安になりやすい。
6月は第1四半期の決算月に当たる。3月ほどではないが決算期の傾向がみられ、企業は保有しているドルを円に換える。よって、円高・ドル安になる。
7月は円安・ドル高
7月は円安・ドル高になりやすい。
理由は不明。
8月の円高・ドル安
8月は円高・ドル安になりやすい。
上にも書いたが、米国債の償還期限および利払い日は2月と8月に集中しており、しかも日本の米国債保有残高は世界で一二を争うほど多いため、8月には償還された大量のドルが円に換えられる。その結果、円高・ドル安になる(特に、利払い日の8月15日前後)。
なお、「夏休みに海外旅行を予定している日本人が旅行のためにドルを買うので、円安・ドル高になる」という主張もあるが、「8月は円高・ドル安」というアノマリーの方が強く支持されている模様。
9月は円高・ドル安
9月は円高・ドル安になりやすい。
9月は中間決算の月に当たる。3月ほどではないが決算期の傾向がみられ、企業は保有しているドルを円に換える。よって、円高・ドル安になる。
10月は円高・ドル安
10月は円高・ドル安になりやすい。
アメリカでは、10月は株価が下がりやすい月とされる(「10月効果」)。そのため、リスクオフの円買いが起き、円高・ドル安になる。
なお、10月は1年のうち最も円高になりやすい月、と言われている。
11月は円高・ドル安
11月は円高・ドル安になりやすい。
2月や8月ほどではないが、5月と11月にも米国債の償還期限が集中している。なので、11月には償還された大量のドルが円に換えられる。その結果、円高・ドル安になる。
12月は円安・ドル高
12月は円安・ドル高になりやすい。
アメリカの企業が年度決算(アメリカでは12月決算が一般的)に向けて保有している外貨資産をドルに換える・アメリカの投資家が利益確定に動く、などの理由が考えられる。
12月は荒れる
12月は為替相場が荒れやすい。
アメリカにはクリスマス休暇があるため、市場参加者が激減。おまけに、年末に向けて手仕舞いの動きが加速するため、相場は荒れやすくなる。
ゴトー日
5のつく日と10のつく日(5日・10日・15日・20日・25日・30日)は円安・ドル高になりやすい。
日本の輸入企業は、5のつく日と10のつく日に、取引先への支払いを行うことが多い。支払いはドル建てで行うのが一般的なので、ドルから円への両替え(円売り・ドル買い)が大量に発生。その結果、円安・ドル高になる。
特に、日本の午前8時頃から午前9時55分(仲値が決まる時刻)にかけて、円安・ドル高になる。10時を過ぎると、値動きが緩やかになる。
月齢のアノマリー
新月の日(1日前後)に、ドルは高値をつける。満月の日(15日前後)に、ドルは安値をつける。
つまり、新月から満月にかけては円高・ドル安、満月から新月にかけては円安・ドル高が進む。新月の日・満月の日は相場の転換点に当たるので、新月の日はドルが下がりやすく、満月の日はドルが上がりやすい。
曜日に関するアノマリー
水曜日のスワップポイント
水曜日の深夜から木曜日の早朝にかけては、円安・ドル高になりやすい。
FXでは、ポジションを翌営業日まで持ち越すと、スワップポイントが発生する。また、FXの受け渡し日は翌々営業日に設定されている。そして、土日は市場が閉じているため、土日分のスワップポイントは、水曜日から木曜日にポジションを持ち越した場合に付与されることになっている。
営業日は日本時間の午前7時(夏時間の場合は午前6時)に切り替わるので、水曜日の深夜から木曜日の早朝に向けて金利の低い円が売られ、金利の高い通貨が買われる。結果、円安・ドル高になりやすい。
なお、祝日があると、休日分のスワップポイントが付与される曜日が変わるので注意。
時間帯に関するアノマリー
ロンドンフィキシング
日本時間の25時(夏時間の場合は24時)の直前の時間帯は、値動きが激しい。
ロンドンフィキシングとは、イギリスのロンドン外国為替市場で、金の取引価格および銀行の外貨取引の基準レートが決定される時間のこと。日本時間の25時(夏時間の場合は24時)に当たり、この時刻に向けて為替の取引量は増大し、値動きが激しくなる。特に月末最終営業日は、イギリス企業の決済時期と重なるため、値動きがいっそう激しくなる。
なお、円高になる/円安になる、といった一定の傾向はなく、日によってどちらに動くかは異なる。
イベントに関するアノマリー
大統領選挙のアノマリー
アメリカ大統領選挙の年とその翌年は、円安・ドル高になりやすい。中間選挙の年は円高・ドル安になりやすい。
その他のアノマリー
ジブリ効果
金曜ロードショーでスタジオジブリの作品が放送されると、その日の夜あるいは翌週の月曜日は相場が荒れやすい。円高・ドル安になることが多い。
水星の逆行
水星逆行期間は、相場が荒れやすい。
水星逆行とは、水星が公転軌道と逆向きに動いているように見える現象で、年に3、4回起きる。水星逆行の期間中は、値動きが不安定になることが多い。